育成就労制度が東京圏への人口流出を拡大させる可能性について~新聞記事を元に行政書士が分析

2024年、地方から首都圏へ移動した外国人の数が過去最大になったと、11月30日付の中国新聞(広島)で報じられました。行政書士として外国人支援に携わる立場から、なぜ東京圏への移動が増えているのか、2027年4月にスタートする育成就労制度はこの流れにどう影響するのか、そして広島を含む地方で外国人を定着させるには何が必要なのかを考えます。

東京圏へ移動が進む背景

1. 高賃金を求める若い労働者の動き

報道によれば、比較的若い外国人労働者ほど高収入を求めて東京や大阪へ移動する傾向が顕著です。
特に「技能実習」から「特定技能」へ移行する際、39%が都道府県をまたいで転籍しているとされ、キャリアアップと収入改善が大きな理由になっています。

2. 同胞コミュニティの存在による安心感

新大久保(新宿区)の東南アジア系コミュニティ、西葛西(江戸川区)のインド系コミュニティなど、すでに生活基盤ができている地域は安心感につながります。親族・友人・恋人が住む地域へ移動するケースも多く、「知り合いがいる場所=暮らしやすい場所」という明確な動機が見えてきます。また、知り合いの場所へ居候することで、東京の高い家賃を気にしないで生活できます。

3. 「東京で暮らしたい」というブランド志向

メディアやSNSで東京発の情報が圧倒的に多いこともあり、日本人と同様に外国人の若者の間でも“東京ブランド”への憧れが根強くあります。そして、首都圏には地方に比べて母国語や技術・技能を生かせる仕事が圧倒的に多く、能力を生かして働きたいキャリア志向の強い外国人にとっても東京は魅力のようです。

育成就労制度の開始がもたらす可能性について

2027年には現行の技能実習制度が廃止され、かわりに「育成就労制度」が始まります。
技能実習と育成就労の大きな違いは次の表の通りです。

項目技能実習育成就労
目的技術移転を通じた国際貢献人手不足分野における人材の確保と育成
対象分野91職種(181作業)「特定技能」と同じ特定産業分野
転職の可否原則不可要件を満たせば可能
在留期間最長5年(技能実習2号 → 特定技能1号へ移行可:移行対象職種の場合)最長3年(特定技能1号への移行を前提)

育成就労制度の大きな特徴は転職(転籍)が原則自由化される点です。転籍要件は分野ごと今後定められていく予定ですが、具体的には次の要件を満たせば外国人労働者の転職が認められると考えられます。

①転籍先と転籍元の業務が同一区分
②転籍元で1年以上2年以下の範囲内で働いていた
③育成就労外国人の技能・日本語能力が一定水準以上
④転籍先の事業者が適切である

その結果として懸念されるのが、

  • 地方企業がコストをかけて外国人を受け入れても
  • 優秀な外国人労働者ほど1年後にはより高賃金の東京圏へ移籍してしまう

という流れがさらに加速する可能性です。

外国人1人の受け入れにかかる費用は、渡航費や手数料を含めて3年間で50〜100万円とされます。
制度上は、転籍先からの転籍元への初期費用の補填や、業界団体による引き抜き防止策、地方から大都市圏への転籍者の制限が検討されていますが、実効性はまだ不透明です。

地方で外国人を定着させるためのヒント

もっとも、すべての地方で流出が進んでいるわけではありません。
たとえば山梨県では、ベトナム人労働者の家族が母国で支払う保険料の補助制度が効果を上げ、外国人の転入増につながっています。

また、企業単位では以下のような取り組みが成果を上げています。

  • 資格手当の充実
  • 休暇を取りやすい職場環境づくり
  • 宗教・文化を含めた異文化理解の徹底
  • 入社前のミスマッチ防止(仕事内容の明確化)

特に転籍理由の上位に「職場とのミスマッチ」が挙げられることから、異文化理解と外国人が安心して働ける職場環境づくりが流出防止の鍵になると考えられます。

広島でも「外国人が働き続けたい地域づくり」が重要

東京圏への移動は、賃金格差やコミュニティの存在、ブランド志向など複合的な理由によって加速しています。今後、育成就労制度の導入により、外国人の移動はさらに自由になり、地方から都市部への流出が増える可能性があります。

だからこそ地方では、
「外国人がここで長く働き、暮らし続けたい」と思える環境や制度づくり
がますます重要になっていきます。

具体的には、外国人採用企業への助成金の拡充や外国人に向けた地域情報の発信、外国人サポート体制の拡充といった行政による主導が不可欠です。そして、外国人雇用企業には、何かあったときにすぐ相談できる入管法や労働関連法に精通した行政書士を始めとした有資格者との信頼関係構築が求められます。

育成就労制度は2027年4月からスタートします。行政書士として、外国人が安心して暮らし、地域の一員として活躍できる社会づくりに今後も関わっていきたいと思います。

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